人はなぜ小さなウソをつくのか?

コラム

こんにちは。しんしん心理研究所の心理師Shingo(しんしん)です。
人は日常生活の中で、大小さまざまなウソをつくものです。ウソには相手を騙す悪意のあるものもあれば、むしろ相手を傷つけないためにつく善意のウソもあります。特に「小さなウソ」、いわゆる些細なごまかしや社交辞令は、多くの人が無意識のうちについてしまうものです。

例えば、職場や家庭での円滑なコミュニケーションのために、場を和ませるために必要だと感じることもあるでしょう。「この服どう?」と聞かれて、本音では微妙だと感じても「とても似合っているね」と答えるのは、その一例です。

しかし、こうした小さなウソが積み重なると、どのような影響が生まれるのでしょうか?また、文化によってウソの受容度は異なるのでしょうか?今回の記事では、人がなぜ小さなウソをつくのかを心理学的な観点から掘り下げ、そのメカニズムや背景を解明していきます。

1. 小さなウソとは?

小さなウソとは、誰かを傷つけることを目的としない、比較的軽微な虚偽のことを指します。例えば、

  • 友人に「この服似合ってる?」と聞かれたときに、本音では微妙だと思っても「すごく似合ってるよ!」と言う。
  • 遅刻した際に「電車が遅れていた」と言ってしまう(実際は自分の準備不足)。
  • 仕事の締め切りに間に合わないときに「体調が悪かった」と言い訳をする。

こうしたウソは悪意がなく、相手を傷つけないためや、自分を守るために使われることが多いです。また、文化的背景によっても許容範囲が異なり、日本では特に「空気を読む」文化がウソを生みやすい要因になっています。

2. 人が小さなウソをつく心理的要因

2.1 社会的調和を保つため

私たちは社会の中で生きており、他者との関係を円滑にすることが重要です。小さなウソは、相手を傷つけないため、場の空気を壊さないために使われることが多く、心理学では「ホワイトライ(white lie)」と呼ばれます。

  • 「この料理どう?」と聞かれたとき、たとえ好みでなくても「おいしいね」と答えることで、相手との関係を良好に保てます。
  • 上司に「この企画どう思う?」と聞かれたとき、完全に否定するのではなく「面白い視点ですね」とポジティブに返すことで、摩擦を避けられます。

日本では特に「建前」と「本音」という概念があり、これが小さなウソを生みやすい要因となっています。建前を重視する文化では、本音を言うことが必ずしも良しとされず、人間関係を円滑にするための方便としてウソが用いられることが多いです。

2.2 自己防衛のため

人は、自分の評価を守るためにウソをつくことがあります。心理学では「自己正当化(self-justification)」という概念があり、これは自分を正当化し、良い印象を保つためにウソをつく行動を指します。

  • 仕事のミスをしたときに「メールの確認ミスでした」と言ってしまう(実際は単なる不注意)。
  • 試験の結果が悪かったときに「体調が悪かったから」と説明する(本当は単なる勉強不足)。

また、過去の失敗を思い出し、それを美化する形で語ることも一種の自己防衛のウソと言えます。例えば、「若い頃はすごく努力していた」と言っても、実際にはそこまで努力していなかった場合などが当てはまります。

2.3 認知的不協和を減らすため

「認知的不協和(cognitive dissonance)」とは、自分の考えや行動が矛盾するときに感じる不快感のことです。人はこの不快感を減らすために、自分を納得させるウソをつくことがあります。

  • ダイエット中なのにケーキを食べてしまったときに「今日は特別な日だから」と自分に言い聞かせる。
  • 高価な買い物をした後に「これは絶対に必要だった」と自分に納得させる。

これらのウソは、自己のアイデンティティや価値観を守るための手段として機能します。

2.4 報酬と罰のバランス

ウソをつくかどうかは、得られる報酬と受けるリスクのバランスによって決まります。心理学者ダニエル・カーネマンの「プロスペクト理論」によれば、人は損失を避けるためにリスクのある行動を選ぶことがあります。

  • 遅刻したときに本当の理由を言うと怒られる可能性があるため、「電車が遅れた」と言い訳をする。
  • 成績が悪いことを親に知られると叱られるため、「テストの平均点が低かった」と言う。

さらに、長期的に見ると、小さなウソの積み重ねが本人の行動パターンに影響を与えることもあります。

3. 小さなウソの影響

3.1 ポジティブな影響

小さなウソをつくことで実際にどのようなポジティブな影響かあるのでしょうか?相手のためや、自分のためにつくウソはコミュニケーションを円滑にする効果があります。

  • 人間関係を円滑にする
  • 相手を傷つけずに済む
  • 自分を守ることができる
  • 社会的適応力を高める

3.2 ネガティブな影響

コミュニケーションを円滑にするためにつくウソでも、頻繁にウソをついてしまうと、ネガティブな影響もあるので十分に注意が必要です。

  • ウソを重ねると罪悪感を感じる
  • 信頼を失う可能性がある
  • ウソが習慣化すると、より大きなウソをつくリスクがある
  • 自己欺瞞につながる可能性がある

4. どうすればウソを減らせるか?

4.1 自己認識を高める

自分がどのような状況でウソをつくのかを意識することで、ウソを減らすことができます。「なぜこのウソをついたのか?」と振り返ることで、ウソのパターンを認識し、改善できます。

4.2 率直なコミュニケーションを心がける

ウソをつかなくても済むように、率直なコミュニケーションを意識することが大切です。

4.3 環境の見直し

オープンな環境を作ることで、ウソをつかずに済む状況を増やせます。

まとめ

小さなウソは社会生活において避けられないものですが、その影響を理解し、適切にコントロールすることが大切です。人間関係を良好に保つために必要な場面もありますが、頻繁に使いすぎると信頼を失う要因にもなりえます。そのため、自分の言動を振り返り、どのような状況でウソをついているのかを認識することが重要です。

また、ウソをつかなくても円滑にコミュニケーションを取る方法を学ぶことも有効です。例えば、率直な意見を伝える際には、相手を否定するのではなく、共感や代替案を示すことで、衝突を避けつつ誠実な対話を行うことができます。さらに、職場や家庭などの環境を整えることで、ウソをつかずに済む状況を増やすことも可能です。このように、ウソと向き合い、適切にコントロールすることで、より健全で信頼される人間関係を築くことができるでしょう。
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